005 クラウドファンディングという新しい市場
ユーザーの目線でクラウドファンディングのサイトを訪れると、まず抱くのがトレンド雑誌やネット通販サイトに似ていると考える。それらと違うのは他のユーザーの共感をどれだけ集めているかと言う双方向性だろう。
トップページであれこれ眺めて、気になる商品やサービスへと進む。動画や写真を豊富に使って開発者、企画者が自らプレゼンテーションしている。情報量が雑誌や通販サイト以上に多く、起案者の熱意が伝わってくる。知らなかった知識が深まり、世界が広がる。
一般的な購買行動モデルと違う、ソーシャルメディアを使った購買行動モデルはSIPSなどが知られている。
「共感する(Sympathize)」→
「確認する(Identify)」→
「参加する(Participate)」→
「共有 & 拡散する(Share & Spread)」
の流れとなる。
具体的な事例を見ると特定の財布は売れるが、革製品で言えば、より高度な技術で作られたカバンや靴はあまり売れない。この背景にはカバンや靴が道具やファッションとして売られており、市販されているものと共感できる差別化ポイントが少ないためだ。
財布にしても素材や製法にこだわっただけの製品は売れない。ユーザーが求めているものは財布ではなく、お金をどのようにスマートに持ち運び支払えるか、このポイントに共感している。ユーザー目線でどう訴求するかが問題だ。
クラウドファンディングの人気商品に小さい、又は薄い財布があげられる。だが、単なる大きさや素材、伝統技法をうたったミニマル財布は売れない。もっと奥にある共感できるニーズを提示する必要がある。
例えばクールビズでスーツをあまり着なくなった人はポケットが少なくなっている。電子決済で現金の使用回数が減った人は財布が邪魔だと思っている。彼らの共感ポイントの究極は財布を持たないコトだ。
しかし、現実はカードだけでは全ての支払いが完結するまでインフラが整っていない。賢い消費を志すとポイントカードなどカードが増える一方だ。そこで彼らが求めたのは、パンツやジャケットのポケットが膨らまないコトであり、カードを整理できるコトだ。
ほとんど同じ機能なのに全く売れないモノは、共感するコト提案を外しているからだ。現金もカードもポイントもスマートフォンのアプリになってしまえば何れ必要が無くなる。洋服からポケットが消える時代だって無いとは言い切れない。
現状のクラウドファンディングは、雑誌やTV通販に替わる日常の楽しみになってきている。友達や家族との話題を提供し、ソーシャルメディアを通じて不特定多数の人間とつながるネタでもある。
そこで重要なのが、差別化されたネタをどれだけ多く開発できるかが企業の存続・拡大のカギとなってくる。起案者に頼りきりではネタは尽きるし、他社と同じネタばかりでサイトの訪問者は離れて行く。
手数料を減らして起案者のハードルを下げ、品数を増やすことは一時的に競争力を高められても、いずれ、クオリティーが下がって百円ショップで良いのではないかとユーザーに気づかせてしまう。
社会変化を捉えて、新しい共感ポイントを持ったネタ(ニュース)を積極的に作り出す企業が生き残って行く。モノ余りの時代、ユーザーと直接コミュニケーションしながら、世の中にないコトをクリエイトし、世界に発信することがクラウドファンディング企業に求められている時代だ。
マンション、自動車、家電など、大規模工場で大量生産するライフライン的な商品は、メンテナンスや処分などの所有の煩わしさから解放されるリースやシェアビジネスに移って行く。流行に左右される衣類、バッグなども同様だ。
「いいね!」共感できるコトをどう作るかが課題だと感じる。
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