003 江戸の粋とミニマリスト

 江戸の長屋に暮らす人々は度々襲いくる大火もあり、燃えてしまうような家具や家に多くのお金をかけなかったそうです。モノにとらわれず、コトにお金を使ったんですかね。『江戸っ子は宵越しの銭を持たない』なんて粋な言葉も生まれ、歌舞伎や芝居、相撲などの文化が大いに発展しました。

 これってミニマリストと似てませんか。家や家具、道具や服などの所有欲に振り回されず、最小限のモノで心豊かに暮らす。ミニマムライフは新しいライフスタイルだと思っていましたが違うんですね。江戸時代の方が街全体にミニマリストの精神が広がっていたのかも知れません。

 じゃあ、モノに対する文化は停滞していたか。江戸には沢山の職人が全国から集結し、腕を競い合っていたとか。本当に良いものを作り、庶民はそれを愛でながら大切に使って暮らす。『もったいない』精神もここから生まれたんですかね。実際に江戸には傘はりや陶器を修復する人など、今でいうリサイクル業者が色々な分野に沢山いたそうです。

 常にアンテナを張って、ブームを追いながら安くお得に買うのも一つの価値、伝統に培われた良いものを高くても長く使って結果的に安く上げるのも一つの価値。色々な価値観が広まっているのは良いコトです。

 しかし、残念ながら『モノづくり』の現場の事情は少し違っているような。大量生産をするには数を売ることが必須です。会社を大きくするには避けられない宿命です。

 薄利多売で喜ぶユーザーが沢山いるのも事実ですが、あえて会社を大きくせず、長く存続させる。日本には世界的にも珍しく江戸時代から百年以上存続している粋な零細企業が沢山あるそうです。伝統は古いだけではなく新しい。

 ですが、こうした企業も後継者問題で存続が危ぶまれております。メイドインジャパンをうたいながら、実際に作っているのは外国人労働者だなんてこともあるそうです。

 こうした中で活躍する日本人の作家やクリエーターを応援したいものです。

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