天然素材の味わいを楽しむ贅沢!

節目のある木、シワのある革。それらを「不均一」「欠点」と見るか、「味わい」「個性」と見るかで、ものづくりの価値観は大きく変わります。

大量生産・大量消費の社会では、「素材のムラ」は敬遠されます。品質が安定しなければ、均一なサービスや製品が提供できないからです。

たとえば木材。無垢材の弱点を補うために、複合材の技術が発達しました。繊維の方向をずらした薄板を張り合わせて樹脂で固め、強度を安定させる。さらに、表面に高価な木材の薄板を貼って見た目も整える。すべては「安定した品質」のための工夫です。

革もまた、天然素材であるがゆえに、ムラや個体差があります。バッグや財布などに使われる革製品では、極薄にすいた革を芯材に貼って強度を補い、裏地に薄布を貼って見た目を整えるといった技術が使われます。さらに、汚れを防ぐ樹脂コートや防水加工、傷を目立たせないシボ加工を施すことで、品質はより均一になります。

こうした加工を施された製品は、確かに買ったときは美しく、手頃な価格で手に入るかもしれません。しかし、それは言わば「美しさのメッキ」。使い込むうちにコートは剥がれ、内布は擦り切れ、やがてみすぼらしくなってしまう。そんな姿になる前に、「流行遅れ」として処分され、新しい製品へと買い替えが促されていきます。

けれど、そんなサイクルに対して疑問を感じる人も増えています。建築や家具の世界では、無垢材の人気が高まっています。均質で無機質な表情より、節や木目の違い、経年変化による深みを楽しむライフスタイル。そこに宿るのは、「大人カッコいい」感性です。

技術や加工でつくり出す“整った美しさ”より、素材そのものがもつ個性と、そこに刻まれる「時間」を大切にしています。ヌメ革の極厚一枚革。その表情は一つとして同じものがなく、使うほどに深まる味わいがあります。

整いすぎたものより、不揃いの美しさを。

剥がれてしまう飾りより、育っていく素材を。

あなたは、どちらの「美しさ」と生きていきたいですか?


0コメント

  • 1000 / 1000