似て非なるモノ
皆さんは「職人」と「作家」の違いをご存じですか? 一見、似たような言葉ですが、この二つが目指すものは大きく異なります。「職人」はモノづくりの技術を極め、「作家」は唯一無二の創造に力を注ぎます。一般的に「職人」が作り出すものは「商品」であり、「作家」が生み出すものは「作品」です。クオリティ(均質化された品質)を追求するのが「職人」、世界観を生み出すのが「作家」といったところでしょうか。
日本人は昔から「まじめ」「器用」と言われ、「職人」に向いていたのかもしれません。かつて日本製品が世界市場を席巻していた時代には、高品質とコスト競争力が大きな強みでした。しかし、AIの進化により、職人が培った暗黙知すらも再現されつつあります。かつて「強み」だった職人技が、今や「弱み」に変わりつつあるのです。
時代とともに、人々の価値観やライフスタイルは大きく変化しています。スマートフォンの登場により、日本の得意分野だったカメラ、電卓、時計、音楽プレーヤー、パソコンといったかつて必需品だったものが、次々と不要になりました。これこそが「パラダイムシフト」と呼ばれる現象です。革業界も例外ではありません。キャッシュレス化が進めば財布の需要は減り、持ち物が減ればカバンの必要性も薄れます。こうした変化を前に、従来の「モノの価値」だけに依存するのは危険かもしれません。
日本には「もったいない」や「わび・さび」といった、世界的に見ても独特な価値観があります。単に「生活を豊かにするモノ」を作るだけではなく、「心を豊かにする作品」を生み出すことが、これからの時代には求められるのではないでしょうか。そうした思いから、本革の「エイジング」を相棒として長く楽しめる「作品」づくりを目指しています。
一見、同じように見えても、目指すものが違えば生まれてくるものも異なる。そんな「似て非なるモノ」の奥深さを、これからも追求していきたいと思います。
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