『差別化』と『大衆化』
プロジェクトも回を重ねると同業者にけっこう注目されるようになります。今回はこうした方々に向けての提案です!
一つのマーケットで『ヒット』商品が生まれると、模倣品が次々と市場に登場します。その『ヒット』の背後には、多額のマーケティング費用、試行錯誤、そして数々の失敗が隠されています。しかし、模倣する側はこれらの過程を省略することで、余分な経費や開発の手間を省き、成功を手にすることができるのです。
スピードと資本力を武器にすれば、市場認知を一気に高め、最初の『ヒット』を凌駕することも可能です。また、薄利多売の戦略で市場を席巻することもできます。昭和の時代、こうした『流行と廃り』の繰り返しが経済の活性化を促していました。流行に敏感であることが『カッコいい』とされた時代には、雑誌やマスメディアに従えば特に悩む必要もなかったのです。
しかし、現代は自分で情報を選び取る時代です。このような環境下で日本のマーケットを見回すと『日本の弱さ』を痛感させられる場面が少なくありません。
たとえば、多くのメーカーは今でも『差別化』という言葉を頻繁に使います。この言葉の背景には、すでに先行する類似商品が存在しているという前提があります。オリジナルよりも品質が良ければ売れるだろうという職人気質が優先され『本質』が見失われがちです。その結果、大量生産された『大衆化』製品が市場にあふれ、消費者の興味を失わせています。
日本には創業100年を超える老舗が数多く存在しますが、その多くがブランドとして広く認知されていません。一方で、海外ブランドが目立つ理由は、それらが『本質』を生み出す過程で、手間暇を惜しまない姿勢にあります。そうした取り組みに多くの人々が共感し、価値を見出しているからです。
近年『ファン作り』という言葉が使われるようになってきました。しかし、現場では依然として『差別化』を目的とした『付加価値』という言葉に縛られています。その結果、利益の少ない『大衆化』製品が次々と生み出されているのが現状です。「前例がないから」「リスクが高いから」という理由で新しい挑戦を避けている限り、ユーザーの共感を得ることは難しく、競争の激しい薄利多売の市場で戦い続けるしかありません。
『大衆化』のための『差別化』や『付加価値』に囚われるのではなく『本質』を追求した『作品』づくりを目指してほしい。それこそが、日本の職人たちに求められる使命であり、未来を切り開く鍵ではないでしょうか。参考になれば幸いです。
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