削ぐデザイン

最近はファッションだけでなく、家電や日用雑貨でもシンプルなデザインが人気です。

デザインには大きく二つの方向性があります。一つは『盛るデザイン』です。機能を保ちながら、装飾や色などで差別化を図る手法で、製品単体の美しさを追求する『装飾美』と呼ばれるものです。

一方、機能を維持しつつ、できるだけ構造をシンプルにしていくのが『削ぐデザイン』です。無駄な装飾を加えないことで、パーツや工程が減り、耐久性が向上します。また、個性がぶつかり合うことがなくなり、コーディネートがしやすくなります。思考もシンプルになり、使い勝手などの機能をより深く追求できるようになります。これを『機能美』と呼びます。

面白いことに、『削ぐデザイン』を追求すると、派手さが失われるため、量販店では目立たず、売れにくくなることがあります。注意を引くために、ゴテゴテとしたポップを付けられ、残念な姿で展示されることもあります。これを避けるために、使用シーンの大きな写真を貼ったりして、専門店で世界観を統一して販売する手法が一般的になりつつあります。製品が人に持たれたり、室内に置かれたりして初めて、そのデザインが完成すると考えられています。

作品を紹介する画像を作る際に「人」や「背景」にこだわっているのはこのためです。製品単体の自己主張ではなく、その作品を持つことで得られる世界観を伝えたいと考えています。

そろそろ夏休みを迎える方も多いかと思いますが、ショッピングに出かける際には、モノ作りの視点の違いを楽しんでいただけたら嬉しいです。


0コメント

  • 1000 / 1000