革を制する技術

 本革は天然素材なので仕入れる度に違った表情をしています。それどころか一枚の革でも切り出す場所で性質が違います。シボ加工や塗装など本来の姿を上書きしてしまう技術もありますが、製品作りやデザインの現場も大量生産前提に進化して来たんじゃないかと思います。

 極限まで薄くすいて紙や布などの心材に貼り付ければ、伸びや歪みを押さえることができます。スポンジをはさみ込めばふっくらした仕上がりになります。ステッチをデザインに盛り込んで糸でつってしまえば変形も少なくなります。

 均質なモノを大量に作り出すには本革は木材以上に厄介だったと思います。本革本来の個性は嫌われ者だったんじゃないでしょうか。結果として素材の安定したフェイクが大量に出回ったんだと感じます。

 ところが耐久性で言うと本革に勝るものは無いように思えます。フェイクはもちろん余計な加工をしたものほど劣化してしまう。使い捨てではなく、素材の変化を楽しむ『大人カッコイイ』価値観を知っていただけたら嬉しいです。

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