015 薄さの一歩先

 モノ作りを始めてから色々な形を心に止めるようになった。シンプルなモノを目指すほど形が大切になってくる。

 大は小を兼ねるなんて時代もあったが、今は小さいモノが持てはやされている。温暖化でジャケットを着なくなるとポケットの数が少なくなって困る。

 今回の財布は薄さをテーマに創作した。あえて最小を目指さなかった。小ささを求める背景にはパンツのポケットのシルエットを崩したくないと言う思いがあるからだ。

 薄い財布でも沢山いれれば厚くなる。物理的な結果は曲げられない。そこで視覚的な効果を狙う。底面を丸くして中央に収納物を集めることで緩やかな弧をえがく構造にたどり着く。

 角のある財布はホケットに影を作り出し、シルエットを壊してしまう。ゆるい曲線は厚さがあってもそれを感じさせない。薄い財布は薄く見せる財布でもある。縦・横・高さなど表示される寸法では語られない効果がそこにある。

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