007 既存の形が作り出す新機能
駅や公園で、話し相手や対象もなくブツブツとつぶやく人がいたらどうだろう。殆どの人が「怪しいやつがいるぞ!」と警戒し、近寄らない様にするだろう。しかし、手にスマホを持っていれば「ああ、電話しているんだ」ってことになる。普通の光景に収まってしまう。
人はモノを見た時、自分が学習したコトに当てはめて解釈する。先ほどのスマホがバナナの形をしていたらどうだろう。かなり滑稽で、人々の注目を集めるかも知れない。
形が生み出す違和感や納得は、時代背景や環境によっても違ってくる。クールビスでラフなスタイルがビジネスシーンで通用するようになると、スニーカーで出社してもマナー違反にはならない。それでも、サンダルや下駄はまだ早い。
堅苦しいドレスコードのある高級レストランや料亭などより、ラフなスタイルでも入れるオシャレなカフェが増えたのも納得だ。温暖化で暑苦しい日が続くと、居心地のいいカフェでちょっと休憩なんてこともあるのだろう。
オリンピックを目前にして、都内は再開発が盛んになっている。カフェでなくても気軽に立ち寄れて、眺めがいいなど心地いい公共の場は増えている。オフィスを持たないノマドワーカーが話題になっているのは働き方が多様化した為だ。いつもの部屋を飛び出して図書館や公共施設のラウンジなどで勉強や仕事をした方が気分転換になって効率が上がる。
変化が起きればそこにニーズが生まれる。自分が見つけた心地いい場所をもっと快適にしたいと思うのは世の常だ。そこで、紙袋の素材を本革に変えたバッグを作ってみた。名前はベタに『パーテーションバッグ』。
紙袋の形にしたことでバッグに新しい機能が加わった。それはテーブルに置いても違和感がなく、マナー違反に見えないことだ。
小さな紙袋は底も弱く床には置けない。食品や商品が入っていることもあり、テーブルの上に置くことが常だ。紙袋の形が持つ常識を使うことで、バッグをテーブルに乗せると言うマナー違反を心理的に回避した。
その目的は空間を仕切ること。モノを入れて持ち運ぶと言うバッグの機能に、他人の目線から自分のプライベート空間を守る機能を付け足した。
紙袋は一般のセカンドバッグやクラッチバッグと違い立てて置くことができる。場所を取らず、さり気なく空間を仕切るパーテーションとしては打って付けだ。リラックスできる環境を、スマートに瞬時に作り出せるのだ。
今あるモノの形を活かし、時代の変化で生まれたニーズにマッチングさせる。そこに意外な効果を導き出す。なるほどと驚かせる。クリエイティブにたずさわる者にしか味わえない楽しみだ。
最後に、このバッグを商品化してみようとクラウドファンディングを始めてみた。興味がある人はぜひサイトの方も、気軽にのぞいてみて欲しい。
0コメント