001 機能が盛り沢山で安価な商品が溢れる秘密

 少しでもモノづくりにたずさわった人なら、その商品のターゲットユーザーは誰ですかと聞かれたことがあるだろう。場合によってはF1がどうとか、いやいやF2がどうのと言われて戸惑った人もいるだろう。

 これは性別や年齢によってターゲットユーザーを分類し、その姿を浮き彫りにする為に使われる言葉だ。商品やサービスが、その人たちのニーズに合っているか。価格は適正か。その人たちに知ってもらうために、どのテレビや雑誌で広告するか。こう言ったことを検討するために作られた言葉と考えていただければ問題ない。具体的にその分類を見るとこうなる。

 C   4-12歳の男女・・・小学生 

 T  13-19歳の男女・・・未成年

 F1 20-34歳の女性・・・女性

 F2 35-49歳の女性・・・おばちゃん

 F3  50歳以上の女性・・・おばあさん

 M1 20-34歳の男性・・・男性

 M2 35-49歳の男性・・・中年のおっさん

 M3  50歳以上の男性・・・じいさん

 ちなみに「・・・」の後ろは固くならないように、誠に失礼ながら個人の感想で付け足したものなのであまり気にしないで欲しい。

 どうですか。貴方は、どのターゲットに属していますか。必ずどれかに当てはまる。完璧だ。この年代のこの性別の人は、こんなニーズを抱えている。だから、こんな機能、こんなデザイン、こんなカラー、こんな値段で、こんな宣伝をして、こんなお店で売ろう。

 こうやって商品やサービスは作り出される。いやいや、私の好みが学校の同級生や、会社の同期と丸々同じと言われても・・・。なんて思ってはいけない。モノづくりのルールが壊れる。大量に作って大量に売るには個性を尊重するわけにはいかない。

 大量生産するからコストも品質も安定する。誰しも高い物や、直ぐに壊れる物なんて欲しくない。だから、貴方の年代、貴方の性別の今年のファッションカラーはこれ、遊びはこれ、スイーツはこれで決まり!貴方の好みなんて関係ない。

 そんな無茶苦茶なって思った人。センスないなー。全く持って遅れている。ヒットもブームもマスコミと大企業が作る。予測できないと大量生産できない。予測を間違うと工場の設備の変更に莫大な資金と時間がかかるからだ。

「ええー。わがまま言わないで。分かりました。お客様は神様です。その機能も加えましょう。それでも足りないならオプションで。はい。これだけ盛りだくさんなら、どれか一つくらい欲しい機能が入ってますよね」っとなる。

「多機能、多用途。何でもありですよ。こんなに盛りだくさんでも、まとめて作るからリーズナブル。とってもお買い得ですよ。三割引き、四割引き当たり前?分かりました。もう、お客様には敵わない。貴方だけ、特別にオマケしますよ。数を売らないと大量に作れなくなってしまいますからねー」

 目の肥えたお客が増えるとコストのかからない機能を追加して、割引表示できるようにこっそりと新製品から定価を値上げる。マイコンのプログラム変更がいい例だ。新しい工場で全く新しいものを作るより、投資を回収した工場を使い回した方が利益が出る。売値が同じで機能アップ。利益もアップ。ウイン、ウインの関係だ。

 ユーザーにしてみたら、ほとんど使わない機能が満載で比較して選ぶのも大変だ。ようやく買っても、複雑すぎて使い方を覚えるにも一苦労。失敗しないように迷っていると新製品が矢継ぎ早に登場。またも調べ直しだ。

 多機能に翻弄される生活に疲れた人にとって、買い物と言うものは無駄にエネルギーと時間を浪費し、心が削られる。シンプルな機能の商品を探すと意外に高い。どんどん買い替えさせる流行り廃りのある商品、ほとんど使わなくてもどれか一つはマッチする機能満載の商品の方が経済効率が高いからだ。

 多少値段が高くても長く使って元が取れる。便利すぎる機能に心を消費せず、お手入れなどを楽しみながら愛着を深める。そんなモノづくりを担うものは大企業の大量生産は馴染まない。インターネットで世界に情報発信できる時代、小ロットで丁寧な作り込みを得意とする中小企業を応援したい。

 自分の身の回りを見まわしてふと思う。買って良かったなと思う商品がいかに少ないことか・・・。残念でならないのは私だけだろうか。

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